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第99回ビジネスセミナー開催
企業医療保険セミナー
マネジメント側から見た医療保険問題への能動的取り組みとは?

去る7月28日、ホリデーイン・トーランスにて、第99回ビジネスセミナーが開催された。今回は、コスト上昇が続く医療保険に対して企業マネジメントの立場からどう対応すべきかについて、明治安田アメリカEVPの蒲原信行さんよりお話しいただいた。「トップマネジメントとして押さえておきたい企業医療保険のポイント」と題した当日のセミナーの模様をお伝えする。

医療保険コストを悪化させる要因と解決策

アメリカの従業員1人あたりの医療保険コストは1997年から2004年までの7年間で、約2倍に増大しています。理由は、医療コストの基礎的インフレ、高齢化社会、医療技術の進歩に伴うコストの上昇など様々ですが、これを企業の立場から分析すると、実は5%の社員が総保険コストの80%を占めるという事実があります。つまり、ごく少数の人がガンの治療や臓器移植を受け、あるいは異常分娩や未熟児への対処の結果、1人何十万ドルという高額支払いが発生しているのです。ここをどう抑えるかが重要なポイントです。

「究極の解決策は『みんなで健康になろう』つまり『Healthier Workplace』を実現することです」(蒲原さん)

ただ当然ながら「従業員を病院に行かせない」ことではなく、医療費上昇の根本的原因を知り、それが今後発生しない方法を考えることが重要です。例えば医療費を分析すると、アメリカの場合はストレスや鬱病、糖尿病や痛風の予備軍で病院に通う人が多い。また「年齢と性別の逆相関」といって、男性は年配になるほど医療費が増えますが、女性は意外に若い層が医療コストを多く使うという傾向があります。妊娠分娩もありますし、若い女性の方が病院通い、薬が好きだという説です。それに対して働き盛りの若い男性は忙しいので病院に行かず、本来飲むべき薬も飲まない。そのため意外にもブルーカラーの医療保険はあまり使われていません。

医療保険コストを抑えるために、「安い保険会社を探す」「従業員負担を増やす」といった安直な手段が取られがちですが、それでは「焼け石に水」です。根本的な解決策は「従業員を健康にすること」です。まず最初は、予防医療や、Disease Management Programの導入です。病気を予防しなければ間違いなく今後も医療費は上がりま

米国の代表的な医療保険のタイプ

ここでHMO(Health Maintenance Organization)とPPO(Preferred Provider Organization)のおさらいです。HMOはカリフォルニアで非常にさかんです。他州では必ずしもそうではありませんが、保険料は一般にPPOより安く、基本的な治療は無料です。かかりつけの医師を指定する必要があり、健康に自信がある人には有利ですが、反面、予約が取りにくい、専門的診療内容は保険会社の事前承認が必要などの制限もあります。一方PPOは、指定医を通す必要がなく、好きな医者に行けます。ただ、インネットワークとアウトオブネットワークの区別があり、アウトオブネットワークの病院に行けば自己負担も高くなります。

よくHMOはブルーカラー、PPOはホワイトカラー向きと言う人がいますが、これは誤解です。弁護士でもHMOを選ぶ人はいますし、現場労働者でPPOを好む人もいます。また、カリフォルニアではHMOとPPOの医者はほとんど重複していますので、どちらが良い悪いとは決め付けられません。違いはあくまで、給付内容や患者にとっての使い勝手です。

薬については、1Generic(特許切れのノーブランド)、2Non-Preferred(ブランド薬)、3Preferred(最新の新薬)に分かれます。できるだけ1の購入に誘導する指導が医療費抑制に効果的です。

伝統型保険と自家保険を比較検討することも医療費抑制対策のひとつです。伝統型保険は掛け捨て保険のようなものです。保険料が一旦決まると、発生医療費に関わらず1年間固定です。ですから予算化しやすい反面、医療費抑制への関心は薄くなりがちです。それに対して自家保険(Self Funded)だと、従業員が使った医療費そのものが企業支出になります。ですから医療費に対する意識が高まり抑制効果が働きます。うまく運用できれば伝統型保険よりもコスト削減できます。青天井のリスクが恐ければ、Stop Loss保険を購入することで、リスク上限を設定することもできます。

医療保険問題解決への能動的取り組み

関心の高いテーマのせいか、会場は100人以上の参加者でいっぱいに

 医療費問題の根本的な解決策は先に申しましたように「みんなが健康になる」ことです。この取り組みには3段階あります。第1段階は「健康増進・疾病予防」。日本では当たり前ですがアメリカでは定期健康診断も浸透していないため、保険会社の無料プログラム等を利用して従業員に参加を呼びかけます。年に1回の問診で、生活習慣や飲酒喫煙の状況などのチェックをするだけですが、これだけでも医療費削減効果があります。映画の無料券などオマケをつけるだけで、問診表の回収率は驚くほど上がります。回収後は、保険会社が個別の従業員に働きかけます。HRは通らないためプライバシーの心配もありません。このように幅広く従業員に訴えるのが第1段階です。

第2段階はDisease Management Program(DM)です。本人の意思で事前登録した軽度の慢性患者、成人病予備軍、妊婦等に対し、保険会社が個別アプローチします。保険会社は医療の専門家を多く揃えており、患者の保険請求データを分析し適切な治療を指導します。このプログラムにより、10〜15%の医療費削減効果があったとのデータもあります。

第3段階は、重度の患者や重大手術予定者を対象としたプログラムです。保険会社が、患者、医者と密接に連携し、適切な(効果は高くコストは低い)治療方法、治療スケジュール等を指導します。この部分が医療保険費用の大部分を左右しますので、こうした取組が重要です。

最新のトレンドとして、CDHPとHDHPが注目されています。これは最近の法律でできた課税前に拠出できる医療費用口座から医療にかかる自己負担分を支払う制度です。節税や次年度繰越などのメリットがあり、これを当初自己負担額を高く設定した自家保険と、前述の健康増進・医療費抑制プログラムと組み合わせると、総コスト削減に大きな効果を発揮すると期待されています。現在はまだ全米で300万人ほどの利用者数ですが、2007年には4倍になると予想されています。ただ仕組みが理解しづらい、健康で裕福かつ知的レベルの高い従業員には喜ばれるが、逆の層には魅力に乏しい、といった問題もあります。こうした点が今後どう改善されていくかがポイントです。

保険更改に向けて戦略を立てること

次の更改に向けて、ぜひ長い視点で自社医療保険を現状分析し、将来戦略を立ててください。まず保険会社から詳細データを取り寄せ、ネットワーク、給付内容、従業員拠出水準等の妥当制を、ブローカーやコンサルタントと共に検討します。グループ会社との統合、自家保険への移行等もシミュレーションしてみる。そして、会社全体での健康増進施策も検討してください。

その後に戦略的シナリオに基づくベンダー選びをしてください。企業として達成したい優先順位を明確にした上で、保険会社からの入札を実施します。早いに越したことはないので1年前からでも始めましょう。そして「1番安い会社」ではなく「望むものを最高レベルでかつリーズナブルなコストで提供する会社」を選んでください。

最後に、マネジメントにとって重要なのは従業員とのコミュニケーションです。マネジメント側の考え、目標を開示し、「なぜこの方向に進むのか」を共有しないと、大胆な改革は効果を生みません。そして、繰り返しますが究極の解決策は「みんなで健康になろう」、つまり「Healthier Workplace」を実現することです。



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