第109回ビジネスセミナー
「米国人事管理の基本」
去る6月22 日、ホリデーイン・トーランスにて「米国人事管理の基本」と題したビジネスセミナー
が行われ、日本とは異なる米国の人事管理の基本について、イマ・コンサルティングのコンサルタ
ント、アズサ・ラザロフさんが解説した。日々の人事管理に関してさらに深い理解を得ようと、総
勢90 名もの参加者が訪れた。
「アメリカでは年功序列という考え方はなく、実力主義」とラザロフさん
米国で活動する日系企業におけ
る課題のひとつとして、人事管
理システムの必要性が挙げられま
す。日本流の人事システム、マネ
ージメントスタイルがアメリカの
ビジネス環境にそぐわない点、文
化・言語の違いなどの理由から、
人事管理をしっかり把握すること
が大切です。
人事管理の方法は、日本と米国
では大きな違いがあります。日本
では、終身雇用制・定年退職制を
取り入れているのに対し、米国の
転職は頻繁に行われ、自主的に退
職することが一般的です。また、
年功序列という考え方はアメリカ
には見られず、実力主義であると
言われています。
採用に関しては、日本は毎年決
まった時期に採用されるのに対し、
アメリカは必要に応じて通年採用
があります。つまり、ポジション
が空けば人を雇用するといった採
用方法です。また、日本では、新
卒社員の採用が中心ですが、アメ
リカではエントリーレベルから社
長まで、必要に応じて全レベルで
の採用があります。キャリア面に
おいては、日本は幅広い経験を必
要とするゼネラリスト志向と言わ
れ、定期的な人事異動があり、昇
進・昇給はゆっくりなだらかに行
われます。これに対しアメリカで
は、スペシャリスト志向と言われ、
専門性を重視します。そして、昇進・
昇給は日本のそれに比べると早い
と言われています。
職務分担を見てみると、グルー
プ単位で形成され、ジョブディス
クリプションがないところが多い
日本に比べると、アメリカは個人
の役割分担が明確で、ポジション
ごとにジョブディスクリプション
があるところがほとんどです。
教育・人事開発においては、日
本では、企業内研修など、社員の
育成に力を入れているところが多
く、研修にかける投資が大きいと
言われています。調査によると、
アメリカの約3倍、研修に投資し
ているという結果が出ています。
アメリカでは、従業員各自が外部
で知識・スキルの向上を目指すこ
とが多く、オンラインや夜間クラ
スを受講しているケースが多く見
られます。
アメリカでは、Federal EEO
Laws(連邦法)において、人種・
肌の色・性別・宗教・出身国を理
由に差別することを禁じられてい
ます。また、40 歳以上の人に対
する年齢による差別を禁止してい
ます。また、該当ポジションにお
いて、主要な仕事ができる障害
者を差別することを禁止していま
す。雇用者は、候補者または従業
員が職務を遂行するために、合理
的な範囲内で特別な補助をしなけ
ればなりません。これらは従業員
15 人以上の企業に適用されていま
す。
Fair Employment and Housing
Act(カリフォルニア州法)では、
人種・肌の色・宗教・出身国・家系・
心身の障害(HIV を含む)・遺伝
子情報・ガン疾病等の履歴・婚姻
状況・住居・性別(妊娠・出産を
含む)・年齢(40 歳以上)・セクシ
ャルオリエンテーションを理由に
した差別・ハラスメントを禁止し
ています。差別は従業員5人以上
の企業、ハラスメントはすべての
企業に適用されます。このため、
セクシャルハラスメント・トレー
ニングが必須になっており、従業
員・コントラクターなどを含み、
50 人以上のスタッフがいる企業に
適用されています。また、州内の
スーパーバイザーを対象に、2年
に1度、2時間のインタラクティ
ブなトレーニングを行います。新
しく就任したスーパーバイザー
は、6カ月以内にトレーニングを
受けなければなりません。
人事の大きな役割は、法的リス
クを最小限に抑えることと、優秀
な従業員の確保とモチベーション
の向上の2点が挙げられます。効
果的な人事システムの4つの柱
は、会社のポリシーが書かれた従
業員ハンドブック・ジョブディス
クリプション・人事考課制度・報
酬制度などがあります。
従業員ハンドブックは、新しい
従業員が会社について知るための
重要なコミュニケーションツール
です。これは全社で常に一貫した
人事管理を行うのに非常に効果的
です。また、文書にすることで、
誤解・ミスコミュニケーションを
防ぎます。訴訟の多い米国におい
て、企業を守る重要なツールと言
えるでしょう。そして人事部への
頻繁な質問・問い合わせを軽減し、
人事部門の時間、労力をもっと戦
略的なファンクションに費やすこ
とを可能にします。
ハンドブックの一般的な概要
は、会社説明・ハンドブックの
構成・目的など、雇用に対する
ルール・賃金と給与・従業員ベ
ネフィット・勤務に関するルー
ル・ハンドブック受領のサインな
どです。ポリシー策定の際には、
Employment At Will( 任意の雇
用関係)でなくてはいけません。
これは、従業員と雇用者のどちら
からでも、いつでも、差別的な理
由以外のすべての理由で、または
理由なしで、事前通知の有無に関
わらず、雇用関係を終了させるこ
とができます。
Anti-Harassment Policy( 反ハ
ラスメントポリシー)では、ハラ
スメントの定義・報告の手順など
を記述する必要があります。
また、アメリカでは日本のよう
に毎年強制的に健康診断を受けさ
せることはできません。職務に関
連するテスト(Fitness for Duty)
のみ可能です。同じ職務を持った
従業員には、全員同じテストを課
さなければなりません。診断後の
記録は、必ず雇用関係の記録と別
に管理する必要があります。
ジョブディスクリプションと
は、各ポジションの主要な職務内
容と、その業務遂行に必要なスキ
ル、知識、経験などをまとめたも
のになります。上司と部下が共通
の認識を持つためのツールでもあ
り、企業のニーズが変われば個々
の業務内容も変わります。これに
より、採用活動の際に候補者また
は採用エージェントに職務内容を
明確に説明することが可能になり
ますが、これは契約書ではありま
せん。
一般的なジョブディスクリプシ
ョンの概要としては、基本情報・
ポジションサマリー・主要なファ
ンクション・労働環境・業務遂行
に必要な資質・注意書・受け取り
のサインなどがあります。
次に人事考課制度ですが、個人
的に達成すべき重要範囲、または
改善が必要な特定の業務に関して
目標を設定することが大切です。
これは各従業員が自分の目標達成
がいかに会社全体の目標に影響を
与えているかを認識する良い機会
となり、従業員のモチベーション
を高めることにつながります。
また、従業員と直属の上司との
コミュニケーションの場である、
パフォーマンスレビューを導入し
ています。これは従業員のパフォ
ーマンスを向上させたり、モチベ
ーションを高めることになりま
す。これは欠点や失敗を連ねた一
方的なリストではありません。過
去1年間のパフォーマンスだけで
なく、将来の計画などについての
話を含みます。雇用に関する決定
事項(給与・昇格・配属・教育・
解雇など)をサポートするものと
して、会社を訴訟から守ります。
パフォーマンスレビューを効果
的に行うために、事前に伝えた
い内容のアウトラインを準備した
り、従業員の1年間のパフォーマ
ンスに関するすべての記録をまと
めましょう。他の従業員との比較
を避け、フィードバックはすべて
例をあげて説明すると良いでしょ
う。また、一方的にフィードバッ
クするのではなく、従業員の自己
評価を聞いてあげることが大切で
す。
日本と異なる人事管理の基本知識を知るため約90 名が参加した
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