第110回ビジネスセミナー
「米国に駐在したからには知らなくてはいけない米国法人税」開催
去る7月27 日、ホリデーイン・トーランスにて、「米国に駐在したからには知らなくてはいけない
米国法人税」が開催された。デロイト会計事務所日本企業部門タックスパートナーの秦正彦さんが、
米国法人税の概要から、申告書の読み方、決算書上の税金費用の取り扱いなどを解説した。セミナー
内容の一部をお送りする。

「税法に忠実でありながら、かなりの節税が可能です」
(秦さん)
アメリカは基本的に州が国のよ
うなもので、州がメイン、連邦政
府が遂行できるのは憲法の規定項
目のみです。1913 年の憲法改正で
初めて所得に対する直接課税が認
められ、その後、法人税は紆余曲
折を経て今の複雑な形になってい
ますが、法人税は常に「二重課税」
の原因となるため、できれば支払
わずに済ませたい税金と位置付け
られています。
連邦税としては、所得に課税さ
れる3 つの税金(Income Tax)
法人税、個人所得税、Fiduciary
Tax があります。これに加え、
公的年金やメディケアなどの
Employment Tax、日本の相続税
に当たる遺産税、Excise Tax など
の外形課税があります。
税収に占める平均的な割合は、
2002 年の資料によると、法人税は
10.48%と意外と少なく、個人所得
税からの税収が51.46%でトップと
なっています。法人からの所得税
が少ない理由のひとつは「パスス
ルー」を活用している企業が多い
からです。
アメリカの法人税率(連邦と州)
は39%で、OECD の平均31%や
G 7の36%などと比べ、世界の中
でも高めです。アメリカは税率が
高い代わりに特別な恩恵が多く、
逆に他国は税率そのものを低く抑
える代わりに特別な恩恵を最小限
化している傾向があります。ちな
みに日本はさらに高く、40%です。
アメリカでは法人税を払ってい
ない大会社がたくさんあります。
今、暫定的に“ 法人税” と訳し
ていますが、英語ではCorporate
Tax と言われるもので、Corporate
という事業主体にのみに適用され
る税金です。そもそも事業主体の
設立や運営、解散はすべて州法の
管轄であり、連邦税法では州法に
基づいて設立された事業形態を独
自の区分で課税しています。
連邦税法上、事業主体は州法上
の株式会社である「Corporation」
とその他の事業主体に区分され
ます。また米国外の国で設立さ
れる事業主体のいくつかは「Per
Se Corporation」と呼ばれ、米国
の株式会社同様に取り扱われま
す。この中でCorporation(Per
Se Corporation を含む) は必ず
Corporate Tax を払いますが、そ
の他の事業主体は「パススルー」
としてCorporate Tax を支払う
かどうかは選択制になっています
(Check-the-box)。選択性ですので、
よほど特別な事情がない限り、わ
ざわざCorporate Tax の支払い
を選ぶ人はおらず、結果として多
くの事業主体がパススルーの形態
をとっています。
連邦税法上、事業主体は州法上
の株式会社である「Corporation」
とその他の事業主体に区分され
ます。また米国外の国で設立さ
れる事業主体のいくつかは「Per
Se Corporation」と呼ばれ、米国
の株式会社同様に取り扱われま
す。この中でCorporation(Per
Se Corporation を含む) は必ず
Corporate Tax を払いますが、そ
の他の事業主体は「パススルー」
としてCorporate Tax を支払う
かどうかは選択制になっています
(Check-the-box)。選択性ですので、
よほど特別な事情がない限り、わ
ざわざCorporate Tax の支払い
を選ぶ人はおらず、結果として多
くの事業主体がパススルーの形態
をとっています。
事業主体のうちパススルーの選
択ができるのは「GP」「LP」「LLC」
「LLP」「LLLP」といった形態で
す。このルールは外国の事業主体
にも適応されます。なお、日本の
株式会社は財務省規則に規定され
る「Per Se Corporation」に含ま
れています。「Corporation」のう
ち一定の要件を満たすと税法上「S
Corporation」としての選択ができ、
その場合はパートナーシップに似
たパススルーとなります。なお、
会社設立の段階では、C かS は関
係ありません。
次に、申告書の読み方について
です。法人税申告書(Form 1120)
の中でフォーカスすべきページ
は、会計上の数値との差異(M-3)、
繰越欠損金(Form 1120 Line
29a)、税金の計算(Form 1120
Sch. J)、AMT(代替ミニマム税)
の計算(Form 4626)、情報開示
(Form 5472、5471)、州の申告書(配
賦パーセント Sch. R)です。
申告書の中で最も重要なのが、
会計上の数値との差異(M-3)で
す。会計上の数値と税務上の数値
に差異がなければ、課税所得は
「税引前利益× 35%」となります。
M-3 は、会計上報告されている数
値と課税所得として報告されてい
る数値の間の関係・照合の透明度
を高めるもので、また脱法的な取
引の発見を容易にすることが目的
です。M-3 の提出義務があるのは、
資産総額が1000 万ドル以上の法
人です。M-3 の提出義務がない場
合は、会計上の数値との差異を従
来のM-1 で報告します。
会計上の数値との差異でM-3 に
出てこないタイプとして、繰越欠
損金(NOL)(Form1120 Line29a)
が挙げられます。前年マイナス部
分の繰り越しで、現在20 年繰り
越すことができます。ただし、買
収企業のNOL、連結納税のメンバ
ーとなる前に認識したNOL の使
用には制限が加えられることがあ
ります。
以上、M-3 とNOL で課税所得
を確定したら、それに基づいて実
際に税金の算定をForm 1120 Sch.
J で行います。通常34 〜 35%の
累進税率をかけますが、米国内の
他の関連会社が連結納税せず、別
で申告書を出している場合、税率
区分を共有する必要があります。
通常の税額が確定したら、「代替
ミニマム税(AMT)」を算定しま
す。これは、通常の税金計算とは
別の代替計算を並行して行うとい
うもので、特定の控除の調整をし
た上で若干低い税率をかけて、通
常税額と比較して高い方を払うと
いう仕組みです。これは、経済的
には所得を得ているが、政策的な
控除などを利用して税額を軽減し
ていると思われる企業・個人から
最低限の税額を徴収するために導
入されたもので、課税所得に調整
(通常は加算調整)を行い、AMT
課税所得を算定します。AMT 税
率は20%となります。
AMT 算定目的では、繰り延べ
「NOL」の使用がAMT 課税所得
の90%に限定されます。過年度に
NOL があり、単年でプラス所得
を認識する年度はAMT が発生し
ます。結果として税引前利益の約
2%がAMT となることとなり、
NOL がある場合でも支払わなけ
ればなりません。AMT の算定後、
さらに「R & D Credit」「外国税
額控除」など、企業に有利な税額
控除を差し引いて最終的な税額が
算定されます。
情報開示フォームには、Form
5472 と5471 が使われます。税金
の計算には直接関係ありません
が、未開示には厳しいペナルティ
ーが課せられます。
Form 5472 は海外関連者との取
引詳細を開示したもので、IRS が
移転価格問題の有無の可能性を判
断するものです。少なくとも25%
を持つ外国人・法人株主に所有さ
れる米国法人、外国法人の米国支
店の場合は報告義務があります。
内容は関連者との取引について
の報告ですが、関連者には、25%
外国株主、25%外国株主の関連者、
そして転移価格税制目的で関連者
となる者が該当します。海外の関
連取引先とその内容は、事細かに
ページ2に記載します。関連者が
米国内の場合、連結納税グループ
内のメンバーとの取引は数字の開
示の必要がなくメンバーの身分の
み開示します。
申告書の読み方の最後に、州
法人税について説明します。州
税は「登記州」には関係なく、
州内での活動実態に基づき課税
されるものです。米国内にお
いて州境を越えて活動する場
合、州と企業の間に何らかの関
係(NEXUS)がない限り、税金
は徴収されません。これは連邦憲
法の「Commerce Clause」および
「Due Process Clause」に基づきま
す。NEXUS がある場合、所得配
賦率(Apportionment Factor)と
して、その州における売り上げ、
資産、人件費の3つを基にパーセ
ンテージを設定し、それを企業全
体の所得にかけた額を州法人税と
します。その基となる課税所得は、
連邦の課税所得に微調整(State
Adjustments)を加えた金額です。
決算書上の税金費用(Tax
Expense) の取り扱いについて
ですが、申告書上で支払う金額
とは同じではありません。これ
は、会計原則に基づく金額として、
Current Tax(決算年度にIRS な
どに支払う額)とDeferred Tax
(決算年度にIRS などに支払う金
額ではないが、将来IRS に支払う
ことになるであろう金額に影響を
持つ、会計上の項目に対する税効
果)、そしてFIN 48 Tax Expense
(IRS などに支払う金額ではない
が、申告書から税務調査された際
に支払うことになる確率が高い金
額)から算出します。
「フォーチュン500」に入るア
メリカ企業の実効税率は概して低
く、理論的には35 〜 40%程度と
なるところ、30%程度の企業が多
いのが実際です。多くの企業が、
無期限に海外に投資するという条
件でDeferred Tax を計上しなく
ていいという控除を利用したり、
R&D Credit や製造業所得控除を
利用しているからです。
アメリカにおける日本企業もタ
ックスプランニングが重要です。
まずは合理的な経営判断をし、現
実的なリスク許容度を持つこと、
また戦略的な発想を持つことも大
切です。税法に忠実でありながら、
連結納税やパススルー事業主体の
利用による損益の通算、外国税額
控除などを利用してかなりの節税
が可能です。永遠に税額を減額す
るパーマネント差異ばかりでな
く、テンポラリー差異を利用して
申告書上の支払い税金を繰り延べ
るのも重要なプラニングです。
アメリカでのビジネスに欠かせないトピックに多くの会員が集まった
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