第113回ビジネスセミナー
「米国年金制度の基礎知識」開催
去る11 月7日、ホリデーイン・トーランスにて、「米国年金制度の基礎知識」と題
し、知っておきたい企業年金の常識と最近のトレンドが解説された。マーサーの小寺
さん、後半の一部を同社の坂本さんによる講演で行われた。当日のセミナーの内容を
ダイジェストでお伝えする。
年金は大きく分けて、公的年金
と企業年金、個人年金があります。
公的年金は老後の生活資金の基本
となる部分を提供し、現在働いて
いる人が引退した人の年金を負担
する形を取っています。しかし、
多くの国で少子高齢化が進んでお
り、財政状況が悪化しています。
そのため年金支給の時期を遅らせ
たり、支給額を減らしたりという
ことが起きています。
企業年金は、企業がそれぞれの
状況に応じて適当と考える水準の
年金を従業員に提供し、公的年金
を補うものです。政府は企業年金
をすすめるために税制のメリット
を与えています。個人年金は、個
人自らが生活設計に応じて準備す
るものです。
3つの年金にもさらに種類があ
ります。公的年金は、大きく3つ
に分けることができます。連邦社
会保障年金制度は、日本で言う国
民年金、あるいは厚生年金です。
州および地方職員退職制度は、日
本で言う地方公務員共済制度です。
鉄道職員退職制度は、日本で言う
旧JR 共済制度になります。
企業年金は、確定給付と確定拠
出の2 つに分けられます。確定
給付には給与比例、キャッシュバ
ランスなどがあります。確定拠出
には401K プラン、プロフィット
シェアリングプラン、ストック
ボーナスプラン、マネーパーチェ
スプラン、ESOP、ターゲットベ
ネフィットプラン、SEP プラン、
SIMPLE401 プランなどがありま
す。
個人年金には、個人退職勘定
(IRA)、ケオプランなどがありま
す。
では、なぜ、会社は企業年金を
従業員に提供するのしょう? 企
業年金は、企業が任意で与えるも
のであり、強制ではありません。
会社が企業年金を従業員に提供す
るには、いくつか理由があります。
まず1つ目は、給与の一部を後払
いにすることで税制のメリットが
ある。2つ目は、早期退職優遇制
度で、一定年齢以上での退職を促
進させ、退職率をコントロールし、
労務管理に利用可能。アメリカの
場合は定年制度がないので、年金
制度に早期退職優遇制度を取り入
れ、ある程度の年齢になると、老
後の生活ができるような仕組みに
なっています。
3つ目は、定年加算金のように、
企業が従業員に与える恩恵的なも
のとして与える。
4つ目は、企業が従業員の引退
後の生活にもある程度の保障責任
があるというものです。
企業年金の会社側のメリットは、
税金的メリットと退職率コントロ
ールです。デメリットには、掛金
拠出のコスト、掛金変動のリスク、
制度運営自体のコストなどが挙げ
られます。
従業員側のメリットは、退職後
の資金の準備ができることや、税
制的メリットによって貯蓄がしや
すいなどがあります。デメリット
は会社倒産による給付不履行、今
すぐに給与としてほしくても受け
取れない、などがあります。
1930 年代前半の世界恐慌の影響
で年金制度が破綻し、給付の減額
が増加しました。1875 年にアメリ
カン・エキスプレス社が企業年金
を設立し、大企業を中心に確定給
付制度が広まりました。40 年代前
半、第2次世界大戦下におけるイ
ンフレ対策のために、物価・賃金
統制が行われましたが、賃金統制
の対象とならない企業年金の掛け
金が賃上げ要素とみなされました。
48 年には、企業年金が団体交渉に
おける項目に認められ、50 年代に
は、企業年金が大きく拡大しまし
た。スチュード・ベーカー自動車
の倒産で、年金支給の85%を受け
ることができなかったなどの大幅
な減額問題となったのです。その
ため、ERISA 法が74 年に世界初
の企業年金の法律として制定され
ました。2000 年代前半には株価の
下落により企業年金の財政が悪化
し、それを受けて06 年、Pension
Protection Act が成立しました。
確定給付と確定拠出の大きな違
いは、リスクの担い手が違うとい
うことです。確定給付では、企業
がすべてのリスクを負います。確
定拠出は、従業員自らがリスクを
負うことになります。
確定給付制度の決定方法として、
定額方式があります。定額方式は
支給金額を働いた年数のみに応じ
て決定するものです。他に代表的
なものとして最終給与比例があり
ます。これは、退職時の給与と勤
続年数に応じて決定されます。他
にも、全期間給与比例は退職時の
給与ではなく、在職期間全体の平
均給与と勤続年数に応じて決定し
ます。
もう1つは、キャッシュバラン
スプランと言って、仮想的な個人
口座に給与の一定割合の金額が拠
出され、口座残高には市場金利に
応じた利息が付きます。退職時に
おける仮想口座残高が給付額とな
るのです。確定拠出制度は、個人
口座に給与の一定割合が拠出され、
その掛け金と運用成果が給付額と
なります。キャッシュバランスプ
ランは、本来の確定給付制度と確
定拠出制度の混ざったものと言え
ます。
会社は掛金拠出に関する財政運
営ルールと会計上の開示ルールと
いう2つのルールに従う必要があ
ります。年金会計とは年金制度に
関する費用、積立不足、剰余の一
部を財務諸表に開示するというも
のですが、これがFAS158 による
変更で、測定日が決算日前3カ月
以内だったのが決算日当日に変更
されます。これにより翌事業年度
の予算確定時期が遅れ、日本本社
への報告期限までに必要な情報を
収集するのが困難になるなどの影
響が考えられます。
積立不足、剰余の計上が、変更
前は未確認部分が脚注表示だった
のが、バランスシートに計上しな
ければならなくなり、年金資金運
用結果や債務計算に使用する割引
率の変動が自己資産に大きく影響
します。
財政運営ルールの目的は、年
金制度に拠出する掛金額の上下
限を決めることです。Pension
Protection Act の成立により、積
立不足のある年金制度を持つ多く
の企業において、掛金拠出額が上
昇すると考えられます。
企業は自社の年金制度における
リスク、リターン、コストを把握
し、マネージメントしていくこと
が必要です。リスクを減らすため
に、企業がコントロールできるの
が掛金拠出・資産運用・制度設計
の3つです。あらゆる状況に応じ
てこの3つを適切にコントロール
します。
これらの3つを上手く使うため
には、現状のリスクの把握が重要
です。リスクを20 年に1回の割合
で発生する状況、10 年に1回、5
年に1回といった、発生確率ごと
に把握し、もしそれらが会社とし
て許容できない水準であれば、掛
金拠出・資産運用・制度設計の方
針を見直すことが必要です。
年金リスクを把握し、そのリス
クを適切にマネージメントするた
めには、ステップがあります。ま
ず、単年の現状リスクを把握しま
す。そして、それらのリスクが会
社にとってインパクトが大きけれ
ば、掛金拠出、資金運用、制度設
計の方針をコントロールします。
次に複数年の現状リスクを把握
します。そして、単年と同様、そ
のリスクが何年に1度でも会社と
して許容できないものであれば、
改善が必要です。そして、あらゆ
るパターンで掛金拠出、資産運用、
制度設計の方針を変化させた場合
のシミュレーションの準備をしま
す。それらのシミュレーションを
実施し、リスク評価を改めて行い
ます。そして、評価結果を比較す
るのです。それによって方針の変
更が必要であれば、それらを実行
していきます。
最後に401K について簡単に説明
をしましょう。401K とは、従業員
が給与の一部を現金で受け取るか、
プランに拠出するかを選択できる
仕組みを指します。プランに拠出
された金額は、将来年金あるいは
一時金を受け取るまで課税が繰り
延べられます。これは日本の財形
貯蓄に似た仕組みです。
401K はそれ単独では実施するこ
とはできず、プロフィットシェア
リングプラン、ストックボーナス
プラン、マネーパーチェスプラン
のいずれかに付加して使用するこ
とになります。マネーパーチェス
プランに関しては、74 年以前に設
立されており、一定の条件を満た
すプランのみが401K を付加できま
す。
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