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JBA 特別ビジネスセミナー
「日本の裁判員制度」開催

去る2 月22 日、ホリデーイン・トーランスで「日本の裁判員制度」についての講演会が開 催された。JBA の顧問弁護士で、今回の講師でもある岩永裕二弁護士が、日本で2009 年から 施行される「裁判員制度」について詳しく説明した。アメリカの陪審員制度との違いや、日本 国民の日常生活への影響など、岩永弁護士ならではの鋭い見解に、会場に集まった参加者たち は熱心に聞き入っていた。

一般人が刑事事件を裁く
「裁判員制度は、市民感覚を入れるための制度であるにも関わらず、裁判員の市民感覚が無視されています」と、岩永弁護士
「裁判員制度は、市民感覚を入れるための制度であるにも関わらず、裁判員の市民感覚が無視されています」と、岩永弁護士

裁判員制度とは、日本国民の皆 さんが刑事裁判に参加し、被告人 が有罪か無罪か、有罪の場合どの ような刑にするかを裁判官と一緒 に決める制度です。この裁判員制 度は、刑罰に死刑があり得るよう な、殺人、強盗殺人、傷害致死、 現住建造物放火などの重大な刑事 事件のみが対象となっています。

裁判員の選任方法ですが、まず 選挙権のある人の中から、抽選で 翌年の裁判員候補者を選び、裁判 所ごとに裁判員候補者名簿を作 成、その中から事件ごとにくじで 裁判員の候補者を選任します。次 に、候補者の中から、被告人や被 害者との関係の有無、不公平な裁 判をする可能性の有無などを考慮 し、最終的に裁判員を選定します。

海外に住んでいる皆さんも、裁 判員候補者になる可能性がありま す。今は海外在住でも選挙人登録 できますし、登録している限り裁 判員候補者となり得るのです。た だし、海外在住の場合は、辞退が 認められるでしょう。

裁判員の役割と義務

今お話ししたように、裁判員の 仕事は裁判官と一緒に刑事事件の 法廷に立ち会い、判決まで関与す ることです。アメリカは、集中審 理で陪審員は2週間拘束されます が、日本の場合は限度がなく、「事 件が終わるまで」の拘束となりま す。ですから当然、長期間の可能 性もあります。

証拠を調べ、事実認定をした 後、裁判員と裁判官が話し合い(評 議)、被告人が有罪なのか無罪なの か、有罪ならどんな刑にするかを 決定します(評決)。裁判官は評決 に基づき判決書を作成し、後日評 決を宣告します。この宣告により 裁判員の任務は終了となります。 ちなみに、裁判員の日当は、1日 1 万円以内で、裁判員候補者は 8000 円以内。交通費等は別途支給 されます。

裁判員には2つの義務が課せら れます。1つは出廷義務。この制 度では、裁判員に任命された場合、 基本的に断ることはできません。 従って、正当な理由なく出廷しな い時は、10 万円の過料が科せられ ます。もう1つが守秘義務。「職務 上知り得た秘密」を漏らした者は、 6カ月以上の懲役または50 万円以 下の罰金に処せられます。

前述の通り、裁判員として召還 されれば辞退できませんが、例外 はあります。海外に住んでいれば 辞退できますし、70 歳以上の者、 (会期中の)地方自治体の議員、 学生、過去5年以内の裁判員経験 者、重病人、親族の介護や養育が 必要な者、妊娠中および出産後8 カ月の者などは、辞退可能です。 また、裁判員になることで、重大 な経済的不利益を被る者も辞退で きます。

市民感覚が反映され難い

評決は、裁判官を含む過半数で 決まります。しかしここに落とし 穴があります。「裁判官を含む」と いうことは、裁判員全員が無罪だ と言っても、裁判官が最低1人無 罪と判断しなければ評決は通らな いということです。

またこの評決方法は、裁判員の 意見が反映されにくい構造にもな っています。具体的には、5名体 制(裁判官1人と裁判員4人)の 場合、裁判官1名と裁判員4名中 2名で過半数になりますが、9名 (裁判官3人と裁判員6人)の場 合は、裁判官3名と裁判員6名中 2名で結論が出てしまいます。裁 判員6名中2名の意見しか反映さ れないとなると、市民感覚を入れ るための裁判員制度であるにも関 わらず、裁判員の市民感覚が無視 されているということになりま す。

ちなみにご存知の通り、アメリ カでは評決に陪審員全員の一致が 必要です。

この裁判員制度には、色々な問 題が潜んでいます。1つは裁判員 の参加強制。裁判員候補者になる と、基本的に断ることはできませ ん。これは、国が強制的に国民に 対して労役を課すもので、戦時中 の召集令状と基本は同じです。

また、不利益な扱いを受ける可 能性もあります。例えば今日、 あなたが裁判員に選ばれ、裁判所 に召還されたらどうでしょう。仕 事の予定も先まで決まっています し、正直困りますね。しかし、「仕 事上困る」というのは、辞退理由 にはなりません。なぜならサラリ ーマンは通常、休みでも仕事でも 給料は一緒で経済的不利益を被ら ないとされているからです。

在任中のストレスも問題です。 法廷の中で1日ずっと座っている のは、なかなか普通の人には大変 ですし、犯罪者を目の前に評決や 刑を決めるのは、かなりの精神的 負担となります。

被告人が裁判員制を拒否できな いという、被告側の問題点も挙げ られます。また先に話した通り、 裁判員制度は特定の事件が対象と なるため、犯罪によって制度が変 わるのはおかしいという不平も出 るでしょう。裁判員制度が適用さ れない被告人が、「一般市民に裁い てもらいたいから、裁判員制度を 希望する」と言っても叶いません。 国は、「裁判員制度は良い制度」と 言っていますが、何をもって「良 い」とできるのか不明です。

裁判員制度自体の問題点として は、やはり裁判員の多数意見が無 視されることでしょう。市民感覚 を導入するのであれば、裁判員の 過半数が必ず入っていないと本末 転倒です。

これからは裁判官の批判もでき なくなります。これまでは、裁判 がおかしければ裁判官に問題があ ると批判ができました。しかしこ れからは、裁判に問題があっても 裁判官が悪いのではなく、裁判員 が悪いと見られてしまうこともあ るかも知れません。

陪審員は、もともと国の圧政に 対する民衆(国民の権利)を守る 制度として発達してきました。ア メリカの憲法では、陪審制は基本 的人権です。ところが裁判員制度 は国民の人権ではない。「国にとっ ていい制度であるからやる」とい うのが、裁判員制度の考え方なん ですね。

問題解決のために

裁判員制度に潜む問題を解決す るためには、まず裁判に際して、「裁 判員制度」による裁判か、これま で通りの「プロ」による裁判かの 選択権を、被告人に与えるべきで しょう。そうすれば、被告人は自 分で選んだわけだから、後になっ て憲法違反だという主張はできな くなります。

また裁判員にも、裁判員任命に 対する「辞退権」を認めるべきで す。自分の意志でなるのなら問題 ないですし、やりたい人がやると いうことで憲法違反はなくなりま す。もちろん、評決方法の改善も 必要。市民感覚を取り入れるなら、 少なくとも裁判員の過半数の意見 が反映されるべきです。

いわゆる「人質司法」を改善す ることも重要です。現行では、容 疑者を逮捕後48 時間拘束でき、裁 判所の許可を得ればそれ以上の拘 束も可能です。実際は、「逮捕=犯 罪者」という理由で、自動的に身 柄が拘束され、その期間もどんど ん長くなります。そうなると、逮 捕された人間はその場を出たいが ために、自分に不利な供述を強制 され、その結果冤罪の可能性が増 えます。ですから、「保釈」を原 則的に認めるようにすべきでしょ う。

法廷では、公判に提出される証 拠から推認できるものだけが事実 です。証拠にないものは、裁判上 事実ではありません。しかし、公 判に出てくるのは検察官にとって 有利な証拠ばかり。そういう証拠 ばかりだと、裁判官が判断を間違 ってもしょうがありません。です から、検察官側からの証拠だけに 頼った刑事裁判も改めなければい けません。この意味で、弁護士側 にも証拠収集権限を持たせるべき です。これにより、「武器対等の原 則」を実現すべきです。

最後に、当の裁判官。裁判官は、 限られた証拠の中での事実認定を 要求されます。その認定に必要な のが、論理則と経験則。「論理的に、 A があればB の事実が成り立つ」 というのが論理則で、これは裁判 官のお得意芸です。もう1つは「A があれば、経験上C になる」とい う経験則。社会生活で培った人生 経験に基づいての判断です。

ところが裁判官は、一般的な社 会生活とはかけ離れた世界で生き ているため、その経験も限られて おり、経験則上の推認に間違いが 生じる可能性があります。ですか ら、裁判官に市民感覚を持たせる ためにも、裁判官になるための前 提条件として、5年間の弁護士活 動を含めた最低10 年の実務経験を 要求すべきだと思います。

岩永弁護士のわかりやすい説明に、会場中が熱心に聞き入った
岩永弁護士のわかりやすい説明に、会場中が熱心に聞き入った

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