JBA 南カリフォルニア日系企業協会 - Japan Business Association of Southern California

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2018/11/28

企画マーケティング部会 第216回 JBAビジネスセミナー報告「ロボットと共存する社会」

去る11月28日、トーランスのMiyako Hybrid Hotelで第216回JBAビジネスセミナーを開催した。セミナー講師は、SoftBank Telecom America Corp.の中村浩一郎さん。サービスロボット分野のグローバル事業開発に携わってきた経験から、サービスロボットに焦点を当て、市場や課題、具体的なユースケースなどについて解説した。

中村浩一郎さん
[講 師]
中村浩一郎さん

Director of Business Development, SoftBank Telecom America Corp.
アメリカ生まれ。ノースカロライナ州立キーナンフラグラー・ビジネススクール卒業。香港駐在、アメリカ留学を経て、2008年ソフトバンクグループ(株)入社。中国駐在を経て、2015年ロボット事業に参画。2018年より現職。

 

今後ますます期待されるサービスロボット市場

「20年前、Appleと言えば果物のこと。当時、コンピュータの容量は1ギガバイトでしたが、今、私が所持するMacBook4は1テラバイト。なんと約1000倍です」と口火を切った中村さん。わずか20年足らずで情報通信技術が急速に発達した理由として、日本の総務省は、(1) 端末の小型化・多様化、(2) 端末通信速度の超高速化、(3) ストレージの大容量化の3つの要因が相互に影響していると分析している。

そんな中、「ロボット市場には誰にでも参入するチャンスがあります」と中村さん。ロボットをビジネスの切り口で見た際に、8つの役割(企画、要素技術、製造、運用、保守、販売、コンテンツ・アプリ、アプリプラットフォーム)があるが、要はこの中で自社がやること、やらないことを決めればいいというのだ。「例えば弊社のロボット、Pepperは、我々だけで開発、製造、販売、運用、補修、アプリ開発をしているわけではありません。私たちは約200社にもおよぶ認定デベロッパーとの懸け橋となるマッチングサービスの仕組みを作り、ロボットのサービスにおけるエコシステムを作ろうと取り組んでいます」。

続いて、ロボット開発関係者がロボットの新ビジネスに寄せる期待には、人間の幸福(笑い、癒し、悲しみからの解放)、難題解決(うつ病、アルツハイマー病)、論理的思考力(教育)、社会問題解決(高齢化社会)、企業課題解決(生産性向上)などがある、と話した中村さん。「今年、ロボット関係者とディスカッションする機会がありました。ロボットビジネスの実現に向けては、費用対効果、スピード感の持続、グローバル展開の際に起こりえる問題など、多くの課題があります。そんな中、大きなポテンシャルを持つロボットビジネスは、自社だけでなく他社の技術やサービスを取り入れることが必要。それにより、ロボットのパフォーマンスが上がるのではないかと。現時点では妄想の域を出ないですが、熱い議論が交わされました。やはり、ロボットビジネスにはロマンがありますね」。

ここで中村さんは、Pepperについて詳しく説明。人間の感情を理解して自ら動くロボットを作るという発想から、同ロボットが誕生したと語った。「人間の感情と直結する声や表情などの音声・画像データと、さらにそれ以外のインプットを掛け合わせ、ロボットに人間の感情を認識させようと。またロボット自身も周囲との関わりで感情が変化する。例えば放っとおくと落ち込み、褒めると明るくなる、そんなビジョン先行でPepperの開発が始まりました」。

2010年に構想が始まり、2013年、初のプロトタイプを製造、そして2015年に満を持して市場に投入したものの、ローンチ1年後には批判的な意見が出た。しかし、一方で「プロダクトアウトのコストを払って初めて、マーケットインの新産業が立ち上がる」という意見もあったという。「プロダクトアウトとは、消費者のニーズよりも、作り手の理念等を優先させること。消費者は必ずしも欲しいものを明確に知っているわけではなく、形のある商品が出てから欲しいかどうかを判断します。そもそも、顧客が特にロボットを欲しいと思っていないのに、ロボットを投入することを決めたのですから。作り手には創造的な商品を作り出すと同時に、新しい価値を顧客に伝えるためのプロモーション能力が必要なのです」。

 

サービス分野ロボットのユースケース

次に、中村さんは、サービス分野のロボットがどのように利用されているか、具体的な例を挙げて解説。倉庫業、リテール業、製造業向けの「自立走行ロボット」をはじめ、人材不足・高齢化を解消する業務用「ロボット掃除機」、リテール業向けでドア・ツー・ドアの配達サービスを行う「ラストワンマイルデリバリー自立走行ロボット」、さらに「バリスタロボット」「人型ロボット」「犬型ロボット」「遠隔操縦人型ロボット」「全自動衣類折りたたみ機ロボット」などを紹介した。「『バリスタロボット』は、スマホで注文するとロボットがコーヒーを淹れてくれます。完全な自動化はまだまだですが、以前、私がこのロボットを導入している店に行った際にあった不具合が、次に行った時は改善されていました。日々改善して精度を高めているんですね。

人型ロボットでは"ASIMO"(ホンダ)が有名ですが、自立するために必要な要素を備えていました。犬型ロボット"Aibo"(ソニー)は、2018年にリバイバル発売されましたが、ペット用途に加え、現在は企業の受付、病院の待合室、介護施設など法人にも広く導入されています。また、ボストン・ダイナミクス社の犬型ロボットは、日本の建設現場ですでに実証実験が始まっています。人に危険を及ぼすようなエリアで代替活用することで、安全面の向上、作業員の少人化、高い効率化を目指しており、来年の8月以降には本格活用も考えているそうです」。

さらに中村さんは、建設業や災害支援向けに開発された遠隔操縦人型ロボット"KanaRobo"(アスラテック)について言及。「汎用機を"ラジコン"に変えるロボットです。例えば工事現場にロボットを運び、そこにあるショベルカーに設置すれば、遠隔操縦できるようになるというもの。コントローラーは本物と変わらないコックピット型を採用しているので、正確な操縦が可能です。また、ヘッドマウントディスプレイで現場の状況をリアルに視認できます。作業員は使いなれたショベルカーだからこそ数センチ単位の作業ができるわけで、コントローラーがタブレットだったりするとそうはいきません。また、使い方を覚えるのも大変です。しかし、コックピット型なら作業員にとってリアルに近い。今後、どんな現場においても、ロボットを完全に無人化・自動化するにはもう少し時間がかかります。そんな中、これからの数年は現場の人にも受け入れられる、人に寄り添うロボットが一つのステップとして必要で、これがないとロボットは普及していきません。そういう意味で、これは三方良しの事例だと思います」と話した。

 

ロボット(超知性)と人間の共存社会

最後に、中村さんはよく聞かれる質問として、ロボット導入のメリットや、人間への影響などを回答と共に解説。中でも「ロボットは雇用を奪うか」という問いに対しては、「シンギュラリティとは、コンピュータが人類を超える日と定義しています。人間の脳細胞と同じ機能を持つのがコンピュータのトランジスタですが、2018年には1チップの中にトランジスタが300億入るようになり、これが人間の脳とのクロスポイントだとしていました。現在、部分的には人工知能が人間を上回るところもありますが、全ての分野で人間の脳を超えたわけではありません。しかしこれからも人口知能の進化は加速するでしょう。重要なのは、人間に何ができるか考えること、そして来たるべき時代を理解することです」と回答した。

シンギュラリティを考えるとき、人工知能、スマートロボット、IoT(Internet of Things)が鍵となる。IoTの時代を迎え、2010年時点でインターネットにつながるデバイスを1人が平均2台持っていたところが、30年後には1人が約500倍のデータポイントを持つようになるという。「これをビッグデータ化して人口知能に搭載すれば超知性となり、医療、建設、交通など、あらゆる産業に良い影響をもたらすでしょう。ロボットの開発は、人間の幸せにつながっている。ロボットと人間が真に共存をする時代を目指して、これからもロボット事業に取り組んでいきたいです」と締めくくった。

第216回セミナー
ロボット開発の最新動向を知れるセミナーとあって、多くの企業が足を運んだ。

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