JBA 南カリフォルニア日系企業協会 - Japan Business Association of Southern California

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2022/2/2

企画マーケティング部会 第238回 JBAビジネスセミナー報告「米国の民事訴訟で 日本企業によくある誤り」

 去る12月21日、日本企業が知っておきたい米国の民事訴訟に関する注意点をテーマに、正田美和弁護士が解説するセミナーをオンラインで開催した。

正田美和さん[講 師]
正田美和さん

Jenner & Block LLP 日本プラクティス代表パートナー・弁護士。
東京大学法学部および大学院卒業。東京大学在学中に日本の(旧)司法試験に合格し、2004 年から07年まで森・濱田松本事務所に弁護士として勤務。08 年にシカゴ大学ロースクールLLMを修了し、ロサンゼルスで執務を開始。カリフォルニア州、ニューヨーク州、日本(現在休会中)の弁護士資格を保有。

日本と大きく異なる米国民事訴訟

 最初に正田弁護士は、アメリカの民事訴訟の日本との考え方の違いについて「アメリカの民事訴訟は、真実を徹底的に追求した上で適切な判断を出す、という考え方です。全ての関連する資料をテーブルの上に乗せてそこから判断するのです。証拠開示制度(後述)もそのような考え方に基づいています。さらにアメリカには連邦裁判所と州の裁判所のシステムがあり、さらに連邦裁判所は各地でそのシステムが異なり、非常に複雑です」と語った。

 アメリカの陪審員制度については「非常に異なる背景と価値観を持った人々に判断を委ねることになり、間違いなく勝てるだろうと思っていても結果は分かりません。トライアルに進むことは非常にリスクが高いのです。勝訴か敗訴かの見込みを予想するのは、日本でも難しいですが、ここアメリカでは一層大変難しいと言えます」と説明した。

証拠開示手続とは?

 民事訴訟の流れについて、事例に基づき説明した。まず、相手側より警告レターを受け取った場合、その内容次第では、関連する資料を保全する義務が発生する。裁判所での訴訟が始まった後には、証拠開示手続きが開始する。「証拠開示手続きは、関連する資料を相手方に全て開示するという手続きです。この開示義務を果たさないと、厳しい制裁を受けることもあります。このような開示義務を徹底するために、それより前の段階である、訴訟を合理的に予測できるようになった段階で、関連する資料を保全する義務が発生します」。これら、保全・開示する必要のある資料には、紙だけでなく、メール、さらに「LINE」「Skype」「Zoom」のチャットや動画なども含まれる。さらにメールの自動消去機能も停止する必要がある。

 日本企業の特徴として、正田弁護士は次のような点を挙げ注意を促した。「日本企業は一般的に保有する文書の量が多く、メールでCCに入っている人数も多いです。そのため、保全したり開示したりする文書の量が圧倒的に多くなる傾向にあります。平時より文書の量を減らす努力をしておくと、いざ訴訟になった時の負担をかなり抑えることができます」。

 日本企業の場合は、日本語で作成された文書が多くなるが、正田弁護士は次のように語った。「日本語の文書の内容を確認する(レビューする)にあたっては、私は日本語が母国語の弁護士に担当してもらうようにしています。特に主語がなかったり目的語を省略していたりと、日本語は母国語でない人にとっては非常に困難な言語であり、日本語が母国語でない人がレビューをすると、重要な点を見逃すなどの間違いが発生してしまい、大きな不利益を被る可能性があるためです」。

 また、前述のように訴訟に関連するものは相手方に開示しなければならないが、弁護士と依頼人の間で法的アドバイスが提供された場合で、そのアドバイスが弁護士と依頼人以外には開示されていない場合には、その内容は相手方に開示しなくても良いという、「弁護士と依頼人の間の秘匿特権」という法理が存在する。うっかりアドバイスを他者に開示してしまい、秘匿特権を放棄してしまうことがないようにと、正田弁護士は強調した。

 最後に、日本企業が犯しがちな「プレスリリースでの失敗例」が紹介された。「A社はB社から部品Yが供給されないために、製品Xを製造できず、売り上げが大きく落ち込みました。A社は売り上げの著しい落ち込みを日本の適時開示規則に従って開示しなければなりません。しかし、B社を提訴したことは公にしたくないと考えています。そこで『COVID-19の影響もあって、製品Xの売り上げが著しく落ち込んだ』と記載されたプレスリリースを発表し、株主総会でも同様の説明をしました。その結果、B社は、訴訟においてこのプレスリリースや株主への説明を理由に、A社に生じた損害の原因は自社にはないと反論しました。A社のように『B社を提訴したことは公にしたくないのであえて違う理由を書く』という判断は、アメリカの陪審員や裁判官には全く理解されません。そのような行動をとる前に、弁護士に相談して、訴訟で不利にならないように十分注意する必要があります」。

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