JBA 南カリフォルニア日系企業協会 - Japan Business Association of Southern California

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2022/2/2

企画マーケティング部会 第239回 JBAビジネスセミナー報告「コロナ禍で 中南米ビジネス機会を探る」

 去る1月14日、コロナ禍における中南米諸国の現状を解説し、商機を探ることを目的にしたセミナーをオンラインで開催した。

水野 亮さん[講 師]
水野 亮さん

Executive Researcher / Consultant
Teruko Weinberg, Inc., TWI Global Business
アメリカ、ブラジル、ドミニカ共和国、ニカラグア、タイなどで政府機関やマーケットリサーチ会社での駐在を経験。前職の日本貿易振興機構(JETRO)在勤中には、中南米・米市場や通商政策などに関する調査に従事。コロンビア大学国際関係・公共政策大学院卒。著書に『中南米ビジネス拠点の比較とアメリカ企業の活用事例』『アメリカからの中南米市場戦略』『FTA新時代』『ブラジルの電力危機』など多数。

今後の中南米市場は?

 最初に、実際に同地域に在住していた経験もある水野さんから、中南米の主要国の概要が紹介された。「中南米の主要国を説明する際、私はアンデス山脈の太平洋側と大西洋側に分けてお話しするようにしています。太平洋側のメキシコ、コロンビア、ペルー、チリは太平洋同盟に加入しています。これらの主要4カ国は自由貿易に積極的です。他方、アンデスの東側の主要国、ブラジルとアルゼンチンはメルコスールという関税同盟に加盟しています。このメルコスールは、域内の関税を全て撤廃しており、EUに一歩近い形となっています。ブラジル、アルゼンチンは共に、自国内に産業を抱えているために、関税を上げて産業を育てるという政策を取ってきました」。このようにアンデスの西と東では貿易についての考え方が異なるという点を強調した上で、各主要国のプロフィールを解説した。

 「ブラジルは中南米では経済規模が最大で、人口は2億1330万人です。日系企業の数は20年度で648社です。商社、自動車、電気電子、工作機械、ヘルスケア、消費者向け小売サービスと幅広い業種の企業が現地に進出しています」。

 次にメキシコについて紹介した。「メキシコの人口は1億2600万人と、日本より少し多い数ですが、実は20年前には1億人に達していませんでした。進出日系企業は1300社と群を抜いて多いのですが、業種が広範囲にわたるブラジルと異なり、自動車業界の企業がほとんどを占めています」。

 さらに、水野さんは今後の各国の経済成長予測に関して、「21年にコロナからの回復が見られたものの、22年には早々に失速する見通しです。ブラジル経済は21年後半ですでに減速を開始し、22年の最新GDP成長率はわずか1.4%です。米国の金融引き締めで中南米諸国は今後大きな影響を受けるリスクがあります」と説明した。

不透明さ増す政治情勢

 各国の政治情勢については、「アルゼンチンは左派、チリ、ペルーは急進左派政権が誕生し、企業にとっては厳しい政策の導入が予想されます。ただし、メキシコは現大統領のAMLO(アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領・中道左派)が強く支持されています。他の国に比べれば、政治情勢は安定していると言えるでしょう。ただ、このAMLO大統領はここ最近、本来の左派の色を見せている点に不安を感じます。また、ブラジルはボルソナロ大統領が現職ですが、22年の大統領選には過去に大統領を務めたルーラさんが出馬を表明しており、国民から圧倒的な人気を集めています。彼が再選されたら左派政権に戻ります」と左派の台頭が目立っていると指摘した。

 コロナ禍でのビジネス環境については、メキシコとブラジルを取り上げて解説した。「メキシコではコロナ禍での労働者の確保や感染対策などの課題は残っていますが、他の中南米諸国と比較するとビジネス環境の正常化は進んでいます。一方、ブラジルは治安悪化が顕著になっています」。
 また、中南米市場で期待が見込める分野としてテクノロジーを挙げた。「21年1月時点の南米地域のネットユーザーの割合は72%で、これは新興地域ではトップの数字です。さらにEコマース市場が、ロックダウンの影響もあって大きく成長中です」。

 さらに、トランプが中国に強硬姿勢を見せた後、バイデンも香港、ウイグルの人権問題を鑑みて中国に対する制裁措置や輸入停止の政策を取ったことで、結果的に中南米が漁夫の利を得ていると語った。「米国企業の輸入調達先を、中国からメキシコなどの中南米諸国に変更する動きが見られました。また、中国が中南米にアプローチし、今では『一帯一路』に中南米の19カ国が参加しています。いつの間にか、中南米地域での中国の経済的プレゼンスが顕著になっているのです」。

 そして、中国が加盟したCPTPPは、米国不在のまま求心力を増している現状に触れ、「米国不在でもアジア・中南米諸国の巨大自由貿易圏のメリットは享受できます。CPTTPへの米国の再度の加盟はあるのか、今後のバイデン政権の動きに注目が集まります」と結んだ。

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