JBA 南カリフォルニア日系企業協会 - Japan Business Association of Southern California

サイト内検索

2021/4/2

教育文化部会主催「バイリンガルセミナー ~継承日本語教育と グローバル人材の育成~」報告

 去る3月7日、2019年、20年に続き3回目となるバイリンガル教育セミナーを、オンラインで開催した。今回もカリフォルニア州立大学ロングビーチ校の名誉教授のダグラス昌子さんが講師を務めた。

ダグラス昌子さん[講 師] ダグラス昌子さん
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校 アジア・アジアンアメリカン研究学部日本語科名誉教授。専門研究分野は継承日本語の発達、カリキュラムデザインとインストラクションなど。南カリフォルニア大学卒。教育学博士。

グローバルな人材とは?

 セミナーの冒頭、河井教育文化部会長が挨拶し、「前回のウェビナーではパンデミックの先が見通せない状況でしたが、現在は少しずつ以前の日常に近付いているように感じます。本日は日曜の朝にもかかわらず多数の方々にご参加いただき、ありがとうございます」と述べた。
 その後、登場したダグラス教授はまず、2020年に開催された国際フォーラムについて紹介した。「昨年、世界の継承日本語教育機関の関係者をつなぐ『BMCN(バイリンガル・マルチリンガル子どもネット)国際フォーラム』がオンラインで開催されました。そのフォーラムでは、海外での継承日本語教育の現状と、共通の課題が明らかになりました。このフォーラムのテーマは『日本語教育推進法に関する国際フォーラム~グローバル人材を育む国内外の継承語教育推進のために~』というものでした。今日は、海外に住む日本の子どもたちがグローバル人材になるために、大人がどんな支援をしていけばいいかについてお話しします」。
 続いて、19年に日本で制定された日本語教育推進法について説明した。「この法律は、急速に進む日本の少子化を背景に、外国籍の人材とその家族が今後増えることから、その子どもたちの日本語教育が急務になっていること、さらに海外における日本語教育も合わせて推進していくというものです」。
 次に、「グローバル人材とは何か」について、ダグラス教授は文部科学省の定義を読み上げた。「世界的な競争と共生が進む現代社会において、日本人としてのアイデンティティーを持ちながら、広い視野に立って培われる教養と専門性、異なる言語、文化、価値を乗り越えて関係を構築するためのコミュニケーション能力と協調性、新しい価値を創造する能力、次世代までも視野に入れた社会貢献の意識などを持った人間」。これに対してダグラス教授は「まず、『日本人のアイデンティティー』とは何かということです。海外でバイリンガル・マルチリンガルで育っている子どもたちを「日本人」という単一の枠に押し込めようとすると無理が生じます。彼らは日本語、日本文化以外の言葉、文化で育っているため、複合アイデンティティーを持っており、それを伸ばしてあげないといけません。最近オーストラリアの継承日本語話者の高校生のスピーチを見る機会がありました。スピーチの中で、一番困るのは『何人?』と聞かれることだと言っていました。この高校生はお父さんがアメリカ人でお母さんは日本人、日本におじいちゃんとおばあちゃんがいます。オーストラリアでは現地の友達と交流し、日本ではおじいちゃんやおばあちゃんと過ごすそうです。どこにいても違和感を感じず、自然に生活ができると話すこの高校生のような人が、グローバル人材になる素地を持っているのではないかなと思います。アイデンティティーが健全に育っている人は、自分およびその環境を肯定的に見られるということなのです」と語った。

アメリカの継承日本語教育

 さらに、「バイリンガルの研究では、日本語と英語がそれぞれ別々に、それぞれが母語話者のように完全に育つという見方はしていません。根が太く大きく伸びた木(日本語)に接ぎ木(英語)をするとそれもよく伸びる。そしてその木に形も数も違う葉がいろいろなところに生え、木の葉が栄養を作り根にそれを送る。日本語の葉、英語の葉で作られた栄養が根に送られますが、根には、日本語の栄養、英語の栄養という区別はなく、みんな一緒に一つの所に溜められる、これがバイリンガルということです。葉の数が多く、葉が大きいほど栄養もたくさん作られていくので、このいろいろな葉を増やすために、いろいろな経験をさせてあげる必要があるのです」と説明した。
 続いて話は「アメリカにおける継承日本語教育」にテーマが移った。「アメリカでは小学校でイマージョン教育が行われていますが、全米で20校ほどです。また、アメリカには持続可能な言語政策がありません。困った時に、さあどうしようと反応するのがアメリカの言語政策です。最近では2001年の同時多発テロが起こると、(テロリストの母国語の)アラビア語を高度に話せる人をアメリカ政府が探し始めましたが、なかなか簡単には見つかりませんでした。そこで、継承語話者が注目され、国の安全を脅かす国の言語の教育に力を入れ始めました。けれども、日本語はこの類の言葉ではないので、継承日本語教育には依然、国からの支援はありません。しかし、私たちが草の根活動で取り組んでいかなければなりません」。
 バイリンガルに与えられる2種類の認定証についても紹介した。「その一つが、高校の最終学年でもらえるSeal of Biliteracyです。日本語能力の証明と英語を履修したという証明があれば州から無料で認定を受けることができます。もう一つは、AVANTという会社が発行しているGlobal Seal of Biliteracyで、高校の最終学年に限らず、日本語と英語の力があることを証明すればいつでももらうことができます」。
 最後にバイリンガルに育てるために、大人がいかに子どもを支援できるかについて次のように話した。「高校生にはSeal of BiliteracyやGlobal Seal of Biliteracy、 グローバル人材の話をすると日本語を勉強する意欲が出るかもしれません。でも、小学生が土曜に日本語教育機関に通うために必要なのは、楽しいカリキュラムを作ることです。日本語学校に通った大学生は『友達と会うのは楽しかったが、勉強は面白くなかった』とはっきり言います。大人がすべきことは、子どもが楽しく学べる教育を提供することだと思います」。

バイリンガルセミナー(継承日本語教育と
グローバル人材の育成)
ダグラス教授(右下)と教育文化部会の部会員。

過去レポート一覧に戻る

PAGETOP