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2020/3/1

「バイリンガルセミナー2020・ 未就学児童と小学生の児童の言語発達を中心に」報告

2月1日、教育文化部会はあさひ学園と共催で2回目となる「バイリンガルセミナー」をトーランスで開催した。専門家の講演に熱心に耳を傾けた参加者からは質問も活発に寄せられ、大盛況のイベントとなった。

バイリンガルは大きく3つに分かれる

ダグラス昌子名誉教授。
片岡裕子名誉教授。
知念聖美准教授。

会場に集まった保護者を前にバイリンガル教育に関する講演を行ったのは、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校アジア・アジアンアメリカン研究学部日本語学科で教鞭を執るダグラス昌子名誉教授、片岡裕子名誉教授、知念聖美准教授の3名の講師陣。最初に知念准教授から次のような自身の体験談が披露された。

「父の転勤で6年生の時にロサンゼルスに引っ越し、あさひ学園に入りました。毎週土曜日が楽しみでしたが、現地校では苦労しました。1日目、休み時間になると他の生徒が一斉にいなくなり、私1人が教室に残りました。後になって、ジュニアハイからは授業によって教室が変わるのだということを知りました。当時は周囲が何を言っているのかはもちろん、何をどう聞けばいいのかさえ分かりませんでした。でも、子どもは困っていることや悩んでいることを、お父さんやお母さんには積極的には話さないと思います。皆さんの方からお子さんに『今日どうだった?』と話しかけていただきたいです。また、私は6年生で渡米しましたので、すでに日本語が母語として私の中にあり、そのことが英語習得に役立ちました。日本語を母語として保つことの大切さを実感しました」。

続いて、バイリンガルには年齢相応に2つの言語が話せる「プロフィシエント・バイリンガル」、1つの言語は年齢相応だがもう1つはそこまで達していない「パーシャル・バイリンガル」、両言語共に年齢相応ではない「リミテッド・バイリンガル」に大きく分けられると説明された。「全ての子どもがバイリンガルになるわけではなく、バイリンガルに育てるためのマニュアルもありません。家庭での使用言語は日本語が望ましいです。さらに、子どものバイリンガルの力は常に変わるので、長い目で見る必要があります。バイリンガルは言葉だけでなく考える力と大きく関わってくると共に、成長につれ文化的なものも含まれてきます。その言語が話されている文化の行動様式にうまく対応できるかが大切です」と知念准教授は話した。

基礎言語力とハイレベルな言語力とは?

次にトピックは「言語力とは?」に移り、ダグラス教授が「言語力には、生活で使う言葉としての基礎言語力とハイレベル言語力(例えば社会問題について討論したり、論理的に意見を文章にしたりするのに必要な言語力)があります。日本から5歳児が渡米した場合、日本語に関しては5歳児相当の基礎言語力しかありません。これを引き続き発達させる必要があります。もちろん英語の基礎言語力はゼロなので、これも発達させなければなりません。学校に行っていないので、日本語のハイレベル言語力は身に付かないままアメリカに来たことになります。英語のハイレベル言語力もゼロですが、これを伸ばすには学校経験があるかないかが大きく関わってきます。さて、それではそれぞれの言語力がゼロの状態でアメリカに来て、どれくらいの年月、頑張れば英語力がつくでしょうか。基礎言語力は2、3年と言われています。ハイレベルの力は、カナダでの研究によると、6歳でカナダに来て英語の生活に入った場合、高校生になると英語が母語の子どもに追いつくという結果が出ています」と説明した。

一方で、「母語としての日本語の重要性」については「日本で小学校3年生くらいまで教育を受けてからアメリカに来て英語を習得し始めると、ハイレベルの英語が4年から7年で身に付くという研究結果が出ています。ところが、日本語で学校教育を受けない状態で英語を習得し始めると7年から10年かかります。つまり、背骨になる言語、考える時に使う日本語の存在がいかに重要かということです。接木に例えると分かりやすいでしょう。日本語という、しっかり大きくなりつつある木の根から栄養を吸収して英語の枝葉に栄養が行き渡ることで、英語の木は大きく成長します。他方、日本語をやめて英語を種から植えて木を育てようとすると、大きくなるのに7年から10年かかり、英語の木は未成熟のまま小学校卒業の時期を迎えます」と解説が加えられた。

最後に関係者で記念写真。

定員を超える申し込みがあった。

 

補習校の学習には教師や保護者の支援が必要

次に片岡教授より、渡米年齢を乳児、幼児、小学校低学年、高学年に分け、アメリカでの滞在期間を3年前後の短期、4年~6年の中期、7年以上の長期に分けて、それぞれの場合の渡米当時の日本語経験、アメリカでの教育言語や就学時の問題、帰国時の日本語力と英語力の習得レベル、そして帰国後の日本語力と英語力についての解説が成された。

「家庭言語は日本語であること」「言語習得には大きな個人差があること」を踏まえて、「小学校低学年でアメリカに来た場合は、渡米後すぐに英語力がほとんどゼロで現地校に入るのでストレスレベルが高くなります。(日本語が話せる)補習校が安らぎの場所になる可能性があります。帰国時、滞米が長期に及ぶと、ハイレベルな日本語力にかなりの遅れが見られます。中学、高校になると英語の基礎言語はネイティブ並みになり、ハイレベルの言語力も英語が母語の子に追い付くでしょう。日本帰国後には、中学校以上であればインターナショナル高校も視野に入れた方がいいかもしれません。ただ、問題なく日本の学校に順応できる子どももいます。長年、アメリカで生活した後の帰国ですから、子どもたちにとって楽なランディングになるように配慮していただくことをお勧めします」など、片岡教授は、渡米時の年齢と滞米期間の組み合わせ別に、詳細に傾向と対策を説明した。

さらに片岡教授は、補習校での学習で子どもたちが混乱しないように保護者と補習校教師による支援が不可欠だと語った。「日本語の理解が足りないために、算数の文章問題が解けないなど、補習校で困ることがないように指導していただきたいです。日本語の表現に関しても英語をそのまま日本語にすると『宿題はしませんでした』と少し偉そうな言い方になりますが、日本語では『宿題ができませんでした』という言い方が自然です。こういった細かい表現などについても家庭や補習校で子どもに教えてあげてほしいです」。

アイデンティティーの多様化とハイブリッド化

続いてダグラス教授は「(バイリンガルな教育環境の中で)ストレスを感じる子どもたちへの支援」について次のようなアドバイスを送った。「子どもの様子に変化がないか注意しましょう。学校で好きな先生がいるか聞いてみてください。その先生に何かあった時に相談してみるといいかもしれません。また、アメリカで教育を受けていて、日本語で説明してくれる補習校に通う高校生に家庭教師をお願いするといいでしょう。アメリカの学校文化も知っていて、年齢的にも子どもたちに近いので、大人が言うよりも子どもにとっては身近に感じることができるかもしれません」。

さらに言語と密接に関わってくる「アイデンティティー」について、知念准教授が、最近注目されている「多様化したアイデンティティー」や「ハイブリッドなアイデンティティー」を紹介。いろいろなアイデンティティーがあり、その場に応じて出るというのが、最近の捉え方であり、特に川上郁男教授(早稲田大学)がこの考え方を提唱している。「どのようなアイデンティティーでポジティブになれるのかを考えていかなければなりません。多くの苦労を伴うので、子どもたちは環境の変化に対応しながら成長していきます。そして、私たちにできることは、彼らを理解して見守っていくことなのです」。

会場を埋め尽くした参加者たちの中には講演終了後もその場に残って講師に相談する光景が見られるなど、関心の高さがうかがい知れるイベントとなった。

 

最後に関係者で記念写真。

講師の先生と教育文化部会員による記念撮影。

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