JBA 南カリフォルニア日系企業協会 - Japan Business Association of Southern California

サイト内検索

藤尾 益造 さん

Shinmei U.S.A. Corporation
CEO
藤尾益造さん

1970年兵庫県神戸市生まれ。甲南大学卒業後、株式会社東食(現カーギルジャパン)入社。98年、株式会社神明に入社し東京支社立ち上げ。13年、Shinmei USAのCEOに就任。米国のほか、中国、韓国、ベトナムなどにおける事業の責任者でもある。

アメリカの食文化の中に米を取り入れたい

日本全国展開、そして海外へ輸出する新規事業へ

藤尾益造さん
神明は米など主要食糧の卸売販売業者です。日本では1995年まで食糧管理制度(食管法)の下、政府が米穀や麦などの価格や供給を管理しており、当社が販売を許されていたのは兵庫県のみ。家業ではありますが、もっとグローバルに仕事がしたいと大学卒業後は東京で商社勤めをしていました。いつかアメリカで自分のビジネスをしたいと思ったのは、出張で何度もアメリカも訪れていたその頃です。

ところが97年に勤め先が倒産。95年に食管法が廃止され他県でも米の販売ができるようになった後のタイミングでしたので、全国展開すべく神明に入社し東京支社を立ち上げました。その頃は日本国外に米を売るなどまだ想像もつかないことでした。

輸出を考えたのは新規需要米制度が始まった2010年。国内における米の需要減少を受け、日本政府は減反政策を進めていましたが、 輸出や飼料用などであれば減反政策から外すとしたのです。農家にとっては作付面積の8割で米を作るのも10割で作るのもほぼ同じ作業ですから、作付面積を減らすよりは多少安くても新規需要米を作る方が良い。そこで秋田の農協にお願いして輸出用の米を作ってもらうように。

輸出米は日本の一般的な米より安い値段ではあるものの、海外の米よりははるかに高く、最初はなかなか売れませんでした。しかしオーストラリアと香港の会社が買ってくれ、3カ月後にはオーストラリアから追加注文も。その時に気付いたのは、オーストラリアは日本人駐在員が多いということ。またアメリカであればアメリカ産の日本米もありますが、オーストラリアやヨーロッパでは日本米が手に入りにくい。そうしたところでは、多少高くとも需要があるのです。今では20数カ国に輸出するようになりました。

 

冷凍米飯を通して米をアメリカの食文化の中に

米国進出は2013年。ここは米の生産国かつ消費国であり、米の値段も生産コストも日本より安く、安全性に対する意識も高い。神明の本来の機能である米の調達を考えても、グローバル展開のためアメリカに拠点を置くべきだと考えたのです。ここでは日本の米を輸入する一方で、米国産の米を日本や香港、オーストラリアに輸出。また米国内でも米の需要を拡大すべく、15年には冷凍米飯の工場を竣工しました。ご飯を炊くのは手間がかかりますので、加工米なら需要もあるのではと考えたわけです。

メイン商品は「Rice Versa」という米のパティ。アジアンフードという位置付けの一過性のブームで終わるのでなく、アメリカの食文化の中に米を入れられないかと考え、ナイフとフォークで食べられるパティにしたのです。イメージしたのは、ステーキと野菜の横にパンの代りに米のパティが並ぶ姿。しかし米の需要が少ないところから、新しい需要や新しい食文化を作っていく事業なので簡単ではないですね。ようやくオーガニックやビーガンなどの認証が取れ、昨秋からオーガニック系スーパーにも商品が並び始めたところです。ですから今はまだビジネス上では耐える時期。事業を立ち上げ、赤字から黒字に持っていく段階ばかり担当してきたので、赤字慣れはしているんですが(笑)。米の生産者が減っている現在、いずれ生産法人を日本に作り、その技術で海外にも展開していきたいと考えています。しかし、まずはここアメリカでの事業をしっかりやっていくつもりです。

Shinmei U.S.A. Corporation◎株式会社神明の子会社として2011年設立。米穀の輸出入・販売、およびレストラン 「Wadatsumi」など外食事業を手掛けている。15年にはウエストサクラメントに冷凍米飯工場を竣工。

Rice Versa
冷凍米飯パティ「Rice Versa」。いずれはパンと並ぶ選択肢にしたいと野望を抱いている。

私のLAライフ一覧へ

PAGETOP