幸運に感謝しつつ 目の前の全てを楽しむ

「おもしろきこともなき世をおもしろく」をモットーに

アメリカに来たのは高校を卒業した年の4月。幼稚園からサッカーが大好きだったのですが、高校3年でプロになれないと分かった時には、サッカーに打ち込み過ぎて大学に行く学力はなく、恩師に相談したところアメリカ留学を勧めてもらったのです。洋楽を聴いていたこともあり軽い気持ちでサンディエゴに来たのですが、自分の名前も綴れないほどの英語力でしたから、人生最大のピンチでした（笑）。必死で勉強し、かつアメリカでの生活が楽しかったこともあって、一時帰国したのは渡米3年目。「漢字がある！」と驚き、その時に初めて、世界の標準が日本ではないと気付きました。

大学卒業時には渡米から7年が経っていたのですが、自分の感覚が日本人から離れているのが自分でも分かるほどでした。ここで帰らないと二度と日本に馴染めなくなるかもしれない…と帰国し、1998年にアイシン精機に入社。入社後は、4年間の自動車補修部品の海外営業を経て、03年から06年はシンガポール支店に駐在しながら、豪州、アジア、中近東向けの営業活動に従事しました。

自動車が走っている国なら必ず自動車部品の市場はありますから、多様な国に営業をし、これまで40カ国ほど訪問しましたが、国によって車の使い方も部品の交換のタイミングもさまざま。またビジネスの仕方も日本の常識では計り切れないものがあります。とにかく現地に行って、そこの人が何を望んでいるのかを見て、「現地の人の望むものが100％正しい」という前提にしないと商売はできないと実感しました。そうした面での苦労は今もありますが、チャレンジは楽しむほかないですよね。

仕事において取らなければならない責任は必ずありますが、でも僕はとにかく目の前のものを楽しむべきだとも思うのです。極端な言い方ですが、スタッフにはこう言うのです。「たかが自動車部品だ」と。そんなことでうつになったりしちゃダメだ。これがなくても自動車修理が今日できなくなるくらいで、世の中は回るんだから。とにかく仲間と一緒に楽しむことを考えて、その中で会社を盛り上げていこうと。僕は、日本で生まれて日本で育ったということは、本当に幸運なことだと思うのです。一方でカリフォルニアでの生活もとっても幸せなことだと周りから教わりました。その幸せに感謝して、目の前の全てを楽しまなくちゃ。

LAでも中南米でも現地化を促進

ロサンゼルス駐在は2009年から。97年にサンディエゴを離れた時、駐在員となって戻ってくるのが夢でしたから、うれしかったですね。一昨年から駐在員を一人体制にしましたから、競争率も高いんです（笑）。

駐在員を一人にしたのを含め、渡米後からさまざまな現地化を進めています。例えば、僕がここに来た当初、売れ筋商品の一つは売上の8〜9割が日本製でしたが、今では8割近くが米国製に。現地で作るためには現地の事務所の人間が作る方法を知り、工場にきちんと伝えないといけないなど、体制を整える必要はありますが、僕はやはり現地の市場は現地の人間が現地の責任で運営していくべきだと思うのです。現地のコミュニティーと共に事業が伸びていくのが理想ですよね。今は、中南米に対する営業もロサンゼルスから行っていますが、いずれは中南米に事務所を構え、そこで生活する人間が現地の人と一緒になって営業活動をしていけたらと考えています。

=Company Info=

Aisin World Corp. of America◎ドライブトレインやボディー、ブレーキ & シャシー、エンジンなどの自動車部品を中心に、住生活・エネルギー関連製品、福祉関連製品を製造・販売するアイシン精機株式会社の北米営業拠点。

趣味はサーフィン。英語ができない時もサーフィンを通して友人ができた

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