日本食＆おもてなしを通して 健康的なライフスタイルを普及

相手の価値観を認め日本のおもてなしを伝授

1981年、家族でロサンゼルスに引っ越してきました。日本で日本料理店などを展開する日影茶屋に養子として入った父は、成人した叔父に店を受け渡し、自分はアメリカでレストランを開けようと渡米したのです。その時、僕は中学2年生。英語が全くできなかったので、1つ下の学年から学校に入ったくらいでした。実は父も全く英語ができなかったのですが、82年のChaya1店舗目オープン当初から地元の方を雇い、自分から進んでその中に入っていき、体で日本のおもてなしを伝えていましたね。

僕は大学を卒業後、Four Seasons Hotels and Resortsに就職し、ビバリーヒルズのホテルに配属になりました。当時はバブルに湧く日本からの宿泊客も多く、またロス暴動をはじめさまざまな事件があり、朝から晩まで忙しく働きました。仕事は非常に面白く、やりがいがありましたが、3年半ほど経った頃に父に戻って来てくれと頼まれ、93年末からChayaを手伝い始めました。

ホテルと比較すればChayaは良い意味では、気軽に訪ねてもらえる場所と言うのでしょうか。しかし、大きな組織を持つホテルにあるようなトレーニングマニュアルなどのシステムは整っていませんでした。当時のChayaはまだ2店舗でしたから、社長である父がやりたいことを伝えようと思えば伝えられましたが、会社がもう少し大きくなった時にも安定した形でそれを伝えていけるシステムが必要だと思い、見よう見まねでしたけれどシステムを構築しました。当時からフロントの95％は地元の人でしたから、どの店舗でも一貫して日本のおもてなしを提供するには、従業員それぞれにおもてなしや、Chayaのブランドをどのくらい理解してもらえるかが勝負なんですよね。

その際、日本人ならこうすると、やり方を押し付けるのでなく、アメリカの人のやり方を理解し、それを認めて前に進んでいくのが大事だと考えています。仕事は自分の力だけでできるものでなくて、信頼できる人にどれだけ良い仕事をしてもらえるかで変わってくるもの。でもただ任せているだけでは失敗してしまうこともあるので、自分が持っているビジョンをクリアに伝えて、かつお互いが歩み寄って、理解し合う必要があります。流されてしまうのではなく自分を持ち続ける必要もありますし、バランスの取り方はチャレンジングですよね。

「健康」的なライフスタイルから日本の良さや強さをアピール

ロサンゼルス駐在は2009年から。97年にサンディエゴを離れた時、駐在員となって戻ってくるのが夢でしたから、うれしかったですね。一昨年から駐在員を一人体制にしましたから、競争率も高いんです（笑）。

日本を離れて、いろいろな世界の人と話していると、日本の方がすごいじゃないかと思うことがたびたびあります。例えば2006年に、Chayaレストラングループ内に、M Caféという日本発の食生活法であるマクロビオティックのレストランを始めましたが、マクロビも日本の素晴らしい文化の一つだと思います。M Caféでは、どんな方がいらしても食べたいものが見つかるようにと、日本食だけではなくサラダやラップサンドも出して、伝え方を工夫しています。西洋文化の人が毎日でも食べられる形ではないと、食べてもらえませんからね。

ゆくゆくは、このマクロビの店を展開するだけでなく、ライフスタイルとして全米や全世界に広げていきたいと考えています。多様な人種、宗教の人がいるアメリカでも、やはり共通して重要なものは「健康」だと思うのです。マクロビや健康的な日本の食、おもてなしを通して、日本人の本当の良さや強さを伝えていけたらと思っています。

=Company Info=

Eugene & Assoc., Inc.◎1982年、Chaya米国1店舗目を開店。現在、ベニス、ダウンタウンLA、サンフラシスコでChayaを経営するほか、マクロビオティックレストランM CaféをLAに3店舗展開。日本の日影茶屋は姉妹企業。

LAっ子に絶大な人気を誇る、Chayaグループのマクロビレストラン 「M Café」

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