去る1月21日土曜日、リビエラ・カントリークラブにて、福岡ソフトバンクホークス球団取締役会長の王貞治さんを招き、子供向けの講演会を開催した。王会長は、自身が理事長を務めNPO団体、WCBF(World Children’s Baseball Fair)の表彰式典出席のためロサンゼルスを訪れていた。当地の野球少年、少女を激励したいという希望から、JBA子弟向けに講演会が実現した。約180人の親子が参加し、保護者も子供も“世界の王”の貴重な話に熱心に耳を傾けると共に、後半の質疑応答では、活発に質問が飛び出した。
企画広報部会
王貞治講演会を開催
僕が今、君たちに一番伝えたいのは、野球をやっていて良かったということ。僕が小学生の時は、戦争が終わったばかりで何もありませんでした。薪の棒のバットに、お母さんに布きれを丸めてもらったボールで野球をやっていました。その頃からずっと好きだった野球に70 歳まで関わってこられたのは、幸せだなと思います。ましてやこんな年になっても、若い選手と一緒にドキドキしたり、胸をときめかせて働けることほど幸せなことはありません。
僕は、常にどうやったらもっと打てるようになるか考えることが、すごく楽しかった。バッティングって決して楽じゃないし、簡単でもないんですが、ついつい夢中になっちゃうんです。選手を引退してバットを振らなくなっても、選手がピッチャーと真剣勝負してるのを見ると、自分がバットを振っている以上にワクワクしてね。ユニフォーム脱いだ今も、一緒に一喜一憂しています。
実は、僕は飽きっぽいんです。ただ野球だけは別で、まったく飽きないんだな。だから君たちにも、そういうものが絶対見つかると思う。だから、とにかく色々やってみたらいいんじゃないかな。お父さん、お母さんがそばにいてくれるうちは、うまくいかなくて泣いても慰めてくれるでしょう?ケガをしたら病院に連れて行ってくれるし。君たちのことを思って、朝から晩まで一緒にいてくれる。お父さん、お母さんっていうのは、すごくありがたい存在なんだよ。お母さん、お父さんを大事にするということだけ、今日僕は皆さんにお願いしたい。
両親の励ましの言葉が
子供には大事
両親から言われて信じた言葉に、「最初はうまくいかなくても、絶対に最後はうまくいく」っていうのもあります。自分の野球を振り返ると、最初からうまくいくことはあんまりないんだけど、最後の最後まで頑張れた。だから、お父さん、お母さんの言葉って大事なんですよ。お子さんにとっては、お母さん、お父さんが一番大事な存在なんです。その人に常に励まされていると、子供は正直には反応しないかもしれないけど、絶対に頭の中に残るんじゃないかなと、僕は思います。
今季からダルビッシュがメジャーでプレイしますが、日本人メジャー選手には、ちょっとアメリカでうまくいかなくなったら、日本へどうぞとは、あまり言いたくないんだね。それだと「ダメだったら日本へ帰ればいいんだ」となり、本当の力は出せない。メジャーに1年でも長くいて、1本でも多くヒットを、1勝でも多く勝つんだという強い思いを持たないとね。
来年WBCがあります。アメリカは「今回は日本に絶対勝ちたい。だからその方法を教えてくれ」って言うんです。僕は、「それは多分無理だろう」という話をしたんです。なぜなら、やはり思いが違うんですよ。日本は2度優勝していても、アメリカに対して常に「チャレンジャー」で、「打倒アメリカ」っていう思いがすごく強い。ところがアメリカは、なんだかんだ言っても、絶対自分たちの方が強いって最初から思っているから。そう思いながらやっているうちは、日本は勝ち続けられると思いますね。来年アメリカが、どういう思いでWBCに臨んでくるか、じっくり見させてもらいたいと思います。