JBA 南カリフォルニア日系企業協会 - Japan Business Association of Southern California

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2014/5/16

第169 回JBAビジネスセミナー「企業担当者にとってのオバマケア」を開催

去る5月16日、トーランスのミヤコハイブリッドホテルで、第169回ビジネスセミナー「~テーブル対抗クイズでわかる~企業担当者にとってのオバマケア」を開催した。オバマケアの評価は現在も国論を二分し、混迷を続けている。そうした状況下で、米国日本生命ロサンゼルス支店長の磯部広貴さんが、企業の総務や財務、人事担当者を対象に分かりやすく解説。参加者らは丸テーブルに分かれて着席し、テーブル対抗のクイズ形式でセミナーに臨んだ。

[講師] 磯部広貴 米国日本生命ロサンゼルス支店長。1990年日本生命保険相互会社に入社。2000年から06年にかけて米国日本生命ニューヨーク支店、およびアトランタ支店に勤務し、米国医療保険の実務に従事。11年より現職。 著作に『アメリカの民間医療保険』(保険毎日新聞社)があるなど、アメリカ民間医療保険に関するスペシャリストとして活躍している。

[講師] 磯部広貴
米国日本生命ロサンゼルス支店長。1990年日本生命保険相互会社に入社。2000年から06年にかけて米国日本生命ニューヨーク支店、およびアトランタ支店に勤務し、米国医療保険の実務に従事。11年より現職。 著作に『アメリカの民間医療保険』(保険毎日新聞社)があるなど、アメリカ民間医療保険に関するスペシャリストとして活躍している。

=その基本と背景=

当日は「オバマケアによる企業医療保険への影響」をテーマに、6章に分けて解説された。セミナーはクイズと解説で進む「チーム対抗クイズ形式」で行われ、7つのテーブルに分かれて着席した参加者は、テーブルごとに30秒間相談し、三択から1つに絞った答えをボードで示した。
オバマケアの経緯が紹介された第1章では、早速次のクイズが出題された。
Q オバマケアの正式な法律名称は次のどれか?

A:Health Security Act
B:Health Insurance Portability and Accountability Act
C:The Patient Protection and Affordable Care Act    (答え:C)

全テーブルが見事正解したこの問題。オバマケアの正式名称は「The Patient Protection and Affordable Care Act」で、その頭文字から「PPACA」「ACA」と称される。「オバマケア」とはテレビや雑誌のニュースでしか出てこない俗称で、企業担当者が公式に受け取る文書にはまずそうは書いていない。当のアメリカ人も「オバマケア」と「PPACA」「ACA」は別物と思いこんでいる人がいる。「こうした中で、企業担当者としてまずは名称を把握してください」と磯部さんはアドバイスした。

第2章の「背景と特質」に移った。
Q 2012年の時点で米国民のうち無保険者の割合は?

A: 約10%
B: 約15%
C: 約20%         (答え:B)

アメリカにおける2012年時点の無保険者は約4800万人で、人口の15.4%に相当する。これは米国政府から出されたデータで年によって微妙に変化するものの、大体15%前後で推移しているという。
オバマケアは、①「無保険者の減少」を主目的とした制度改革で、このために②「医療費と保険料の抑制」を進めている。だが抜本的な解決策はなく、③「追加的財政負担の抑制」のためには新しい財源を見つけるしかない状況にある。
ここで留意すべきは、オバマケアは日本のような国民皆保険制度の創設ではないことである。民間の医療保険やメディケアなど、既存の制度に義務化や補助金などの手を加えることで無保険者を減少させていくものに過ぎず、現実的な政策である一方、パッチワークと批判されるゆえんでもある。

続く第3章「保険給付内容への影響」では、企業担当者にとって重要な実務知識を紹介。保険の給付内容にどんな影響があったか、今後どんな可能性があるのかについて解説された。
Q オバマケアによって親の医療保険に加入が可能な子どもの年齢範囲は?

A:19歳の誕生日まで(学生に限り23歳の誕生日まで)
B:23歳の誕生日まで
C:26歳の誕生日まで    (答え:C)

オバマケア以前の保険制度では、親の医療保険に加入可能な子どもの年齢は定められていなかった(ただし規制を設ける州はあった)。また、保険会社の多くは「A」を採用していたが、それにもばらつきがあった。これをオバマケアにより統一、実質的に加入可能の年齢範囲が拡大した。年齢範囲が統一された理由を磯部さんはこう語る。「年齢の拡大はオバマケアによる保険加入促進施策の一つであり、前提条件でもあります。誰でも保険加入が可能になるとは言っても、内容に統一性がなかったりプラン内容が悪質では意味がありません。ですから施策の大前提として、医療保険の給付内容を一定水準以上にすること、そして標準化(誰が見ても分かりやすくする)ことが謳われているのです」。カリフォルニア州における
小企業の保険料算出に関する情報

第4章の「保険料に与える影響」では、次のようなクイズが出された。
Q 2014年以降も保険会社が小企業(カリフォルニア州の従業員50名以下の企業)の保険料算出において用いてよい(契約ごとに格差をつけてもよい)項目はどれか?

A:年齢
B:性別
C:健康状態        (答え:A)

14年より、小企業の保険料算出において「性別」と「健康状態」の利用が禁止された。つまり、労働者の男女比や健康状態に関係なく、小企業の個人には一律同じ保険料を提示しなければならない。ただし、「年齢」「地域」「家族構成」「喫煙の有無」に限っては差をつけてよい。
こうしたレートの算出法が企業にどう影響するのかについて、磯部さんは「従来は、健康状態が悪い人には高い掛金を課すか加入を拒否するなどして加入者の健康状態を一定に保ち、全体の保険料を安くしていました。しかしこれができなくなることで保険料が上昇する可能性があります」と説明。「実際、とうの昔からこの方法を採用しているニューヨーク州では、小企業の保険料は非常に高くなっています」と付け加えた。

さて、アメリカでは「ウェルネス・プログラム」を導入する大企業が多くある。これは、良好な健康を維持している従業員に報奨金などのインセンティブを与えるプログラムで、保険料の20%だったインセンティブ枠が、14年から30%となった。より多くの人が健康になれば医療費・保険料ともに下がるという発想の下、以前から企業がインセンティブを提供していたが、オバマケアの導入でその枠が広がったことは、長期的に見れば医療費を下げる一策である。

=日本の医療保険を払う日本人 アメリカの保険に加入は必須?=

第5章「加入義務化と保険提供責任」に移った。オバマケアの「個人に対する医療保険加入義務化」(Individual Mandate)とは、文字通り「保険に加入しなければならない」ということ。貧困や宗教的理由から加入できないなどの例外を除いては、保険の未加入に対して課徴金(ペナルティー)が科せられる。14年は課徴金が世帯収入の1%だが、16年には2.5%と上昇する予定。「加入できるのに加入しない人からお金を徴収し、全体の運営に補填するのです」と言う磯部さんから、次の問題が出された。
Q 日本の健康保険に加入したままの駐在員は、アメリカで医療保険に加入しないとペナルティー支払いが必要に

A: なる
B:ならない
C:未定          (答え:C)

おとなしかった各チームも、クイズが進むにつれハイテンションに。正解のたびに歓声が上がった

おとなしかった各チームも、クイズが進むにつれハイテンションに。正解のたびに歓声が上がった

米国市民でなくとも、連邦税を支払うだけの滞在日数がある限り保険加入義務化の対象となる。ただし、日本の公的医療保険がオバマケアの基準を満たす医療保険とみなされた場合はペナルティー対象外とされる。現在、在米日本国大使館が米国政府に照会中だがまだ回答が出ておらず、医療保険業界でも見通しは立っていない。磯部さんは、「日本の健康保険はアメリカの医療保険とはまったく異質。中身だけを考えると認められる可能性は低いですが、日米年金通算協定のように2つの国から二重に経済的負担を課すのは好ましくないという発想から、認められる可能性もあります」と補足した。

今後のオバマケアに対する評価については、どの視点から考えるかによって大きく変わる。磯部さんは、「これほど多くの無保険者を減らすことを考えたわけですから、オバマケアを歴史的な偉業と捉えることはできます。実際、保険の加入が新たに可能になった低所得者層にとっては大きな功績です。一方財源確保の観点からは、これまで保険加入が可能であった人たちがより多くのお金を出さなければならなくなりました。社会的弱者への救済は重要と前向きに考える人にとってはいい政策ですが、そう考えない人には悪政です。今後もオバマケアには色々な評価が下るでしょう」と締めくくった。

=参加者の声=

Honda R&D Americas, Inc.の上岡さん
「長年駐在員の福利厚生を担当しておりますので、アメリカの医療保険制度に関しては理解しているつもりでしたが、 やはりまだまだ知らないことがあり、大変勉強になりました」

Origin Electric America Co.,ltd.の松岡さん
「複雑で面倒な内容を、分かりやすくかつインパクトある手法でご教授頂き、ありがとうございました。学ぶことが多く、とても有意義なセミナーでした」

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