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2022/3/29

教育文化部会主催 教育セミナー報告「読む力を育てる 読み聞かせの方法」

 2月27日、子どもの読みの力を育てていくための読み聞かせの方法について、ダグラス教授がウェビナーで解説した。

ダグラス 昌子さん[講 師]
ダグラス 昌子さん

カリフォルニア州立大学ロングビーチ校アジア・アジアンアメリカン研究学部日本語科名誉教授。専門分野は継承日本語の発達、カリキュラムデザイン、リテラシーの発達など。南カリフォルニア大学卒。教育学博士。

バイリンガルの能力の認定

  最初に林教育文化部会長が挨拶し、「JBAの主要ミッションの一つが教育文化支援活動です。今年も昨年に続き、ダグラス名誉教授にご協力いただきます。参加者の皆様にはお休みの日にご参加いただき、心からお礼を申し上げます」と述べた。

 次に講師のダグラス教授が登場し、本題に入る前に昨年のセミナーで紹介した日本語教育推進法の最新情報を紹介した。「日本語教育推進法が改定されて、日本に帰国予定のお子さんだけでなく、(アメリカに)永住予定のお子さんも支援の対象に追加されました。しかし、帰国予定のお子さんは文科省の管轄、永住予定は国際交流基金の管轄となっています。枠を取り外してほしいと海外からも要請していますが、縦の壁が崩せていない状況です。国際交流基金はNHKの幼児番組のDVDを配布していますので、ぜひ活用してください。『おかあさんといっしょ』『いないいないばあ』などのNHKの幼児番組は非常によく研究されて制作されていますので、海外で育つお子さんの日本語教育に有効だと思います」。

 さらに、子どものバイリンガルの能力の認定となるSeal of BiliteracyとGlobal Seal of Biliteracyについて説明した。「Seal of Biliteracyは高校3年時に取得するものですが、州が違うと認定の基準が異なるという問題があります。一方のGlobal Seal of Biliteracyは全世界でレベルが統一されています。これらのシールを高校卒業前に取得するように推奨します。子どもの日本語習得のモチベーションにつながる可能性もあり、これらを取得しておくことで、大学での外国語の履修が免除されたり、上のクラスに進めたりする大学も増えてきています。就職の際にも言語力の証明となります。ここまでが昨年のセミナーのキャッチアップです」。

読み聞かせは量より質

 続いて、ダグラス教授は読み聞かせの方法にテーマを移した。「読み聞かせの効用は、知識を得るだけでなく、想像の世界を広げていくことができ、それが抽象的、論理的思考の育成につながるということです。また、読み聞かせをすることで、親子間の対話が促進され、子どもの話し言葉も発達していきます。また、読み聞かせで意識してほしいのは量より質を重視するということです」。
 
読み聞かせの質を高めるにはインタラティブに行うことがポイントになるとダグラス教授は強調した。そこで、インタラクティブな読み聞かせの見本を示すために、ダグラス教授は『ひゅーどろとへんてこしんにゅうせい』という絵本を、子どもを相手にしているという想定で実際に読み、分からない言葉や内容についての質問をさせたり、話の先を予測するようなやり取りをしたりしながら読んでほしいと話した。さらに「物語が終わったら、どこが面白かった?などと内容についての質問をし、子どもがきちんと理解したかどうかを確認するようにしましょう」とアドバイスした。「インタラクティブな読み聞かせを通じて、子どもと対話しながら理解を促進することができます。子どもが知っているだろうと思われる当たり前の質問はせず、子どもの興味を引き、考えさせるような質問をしましょう。子どもが好きな本であれば、読むたびに理解が深まるので繰り返し読むと良いでしょう」。

壁を乗り越えるための手助け

 そして、ダグラス教授は読み聞かせは幼児期だけにとどまらず、高学年になっても重要だと続けた。「読みの力には2つの壁が存在します。小学校1年生の時の壁は、自分で読まなければならなくなるという壁。次の壁は小学校4年の時で、『読むことで学ぶ』から、『学ぶために読む』と目的が変化することで、子どもには非常に大きな壁になります。乗り越えるための手助けが必要です。子どもは学ぶ時はまず理解ができたという達成感を得ることで先に進むことができます。ですから、家庭で読み聞かせを行うことで教科書の内容を先に理解させておき、次に学校で学ぶという順番を踏むと良いでしょう。次に「教科書の読み聞かせに関してもインタラクティブな方法を推奨します」とし、小学6年生の国語の教科書を実際に読むことで、高学年向けの読み聞かせの手本を紹介した。「内容が複雑な高学年の本は、段落ごとに立ち止まってストラテジーを体験させつつ、その部分を子どもが理解できているかどうかを確認しながら読み進めてください」と、インタラクティブな読み聞かせを行うことで、子どもが理解しているかを必ず確認するようにと語った。
 
参加者からの「読み聞かせは動画やアプリでも効果はありますか?」との質問に対して、ダグラス教授は「これまでの説明でご理解いただけたと思いますが、インタラクティブな読み聞かせと比べると答えは自明ですね」と回答し、保護者が子どもの日本語の読みの力を伸ばすためにしっかりとサポートし、日本語の本を読む時間を設けるようとのメッセージを送り、今回のバイリンガル教育セミナーを締めくくった。

帰国予定のある海外在留邦人家庭の子どもと、永住予定の海外在留邦人家庭の子どもは管轄が異なることを説明する図帰国予定のある海外在留邦人家庭の子どもと、永住予定の海外在留邦人家庭の子どもは管轄が異なります」と説明された。
帰国予定のある海外在留邦人家庭の子どもと、永住予定の海外在留邦人家庭の子どもは管轄が異なることを説明する図ダグラス教授と、同セミナーの企画から当日の運営まで担当した、教育文化部会担当員の面々。

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